加齢黄斑変性とは
加齢黄斑変性は、眼の網膜(もうまく)にある黄斑(おうはん)という部分に異常が現れる病気です。視野の中心部分が暗くなる、あるいは中心がゆがんで見えるのが特徴です。50歳以上の約1%が発病していて、年齢が上がるほど患者数が増える傾向があり、75歳を超えると急増します。
欧米では中途失明の原因のトップがこの病気です。日本でも近年生活習慣の欧米化の影響からか徐々に増え、現在は第4位となっています。
加齢黄斑変性の原因と症状
原因は年齢による変化や光障害、喫煙や食事、遺伝的素因などにより網膜の中心部の黄斑といわれる部分が障害されて、見え方が悪くなることだと言われており、喫煙も症状を進行させることがわかっています。
見たい部分が見えにくいので、本を読んだり、文字を書いたりすることが難しくなります。
さらに進むと、中心部に黒い影のようなものが現れ(中心暗点)、見ようとするものが見えなくなるので、文字を読んだり書いたりすることが困難になり、放置すると視力低下が進み、失明する場合もあります。また、男性の方が発病しやすい傾向があり、女性の約3倍にのぼることが分かっています。
加齢黄斑変性の2つのタイプ
滲出型(ウエット型)
新生血管といわれる異常な血管が発生し、網膜色素上皮の下や網膜と網膜色素上皮の間に入り込んで広がってしまい、網膜にゆがみが生じ視力障害を起こします。
- 網膜の外側から異常な血管「新生血管」ができ、網膜に浮腫(むくみ)や出血を起こし、急激に視力が低下する。
- 早期から症状がでる。
- 失明する人の大半がこのタイプで、日本人に多い。
萎縮型
網膜色素上皮細胞が萎縮し、黄斑の機能が低下します。進行が緩やかで、萎縮が黄斑のさらに中心部(中心窩)におよばない限り、重度の視力障害になることはありませんが、滲出型に移行する場合もあるので、定期的な検診により経過を観察する必要があります。
- 黄斑が萎縮する。
- 進行が遅く、ゆっくり視力が低下する。
- 欧米人に多く、日本人に少ない。
加齢黄斑変性の検査
アスラムチャート(自己チェック)
アムスラーチャート自己チェック
‐30cm離れて見る
‐片目ずつチェックする
‐老眼鏡をかけたままチェックする
加齢黄斑変性症の場合の見え方
‐線がぼやけて薄暗く見える
‐中心がゆがんで見える
‐部分的に欠けて見える
眼底検査・網膜血管造営検査
網膜の傷んだ部分を観察するために、眼底検査を行います。眼底カメラを撮影しておけば、進行したか否かがわかりやすいので、眼底カメラの撮影をすることが有効です。
滲出型では、静脈から造影剤を注入した新生血管などの状態を詳しく調べる検査が必要になる場合があります。フルオレセイン造影検査とインドシアニングリーン造影検査の2種類の検査があります。
光干渉断層計(OCT)
近年開発された光干渉断層計(OCT)は加齢黄斑変性の診断や治療経過の判断に必要な検査です。網膜の断面を連続して撮ることにより、網膜やその下の新生血管などの状態を観察するだけでなく、記録に取って継時的に検討することができます。
短時間で検査ができ、造影剤を使わないので患者さんに負担が少ない検査です。黄斑部の障害の程度や脈絡膜新生血管の状態も観察することができます。
加齢黄斑変性の治療
抗VEGF抗体療法(薬物注射療法)
眼の中に抗VEGF抗体(ルセンティス)という薬物を注射し、新生血管の成長を抑えます。VEGF(血管内皮増殖因子)とは、脈絡膜の血管内皮細胞を活性化させ、新生血管の成長を活性化させる物質です。
ルセンティス治療の手順
1.原則として、ルセンティス治療を受ける前3日間と受けた後3日間は、注射部位の感染を予防するため、抗菌点眼剤(抗生物質の目薬)を患者さん自身で点眼していただきます。
2.治療日には、担当医が眼や目の周りを消毒し、麻酔薬を点眼した後でルセンティスを注射します。
ルセンティス注射後の注意
注射後1週間程度は、感染のおそれがあるため以下の症状に注意し、あらわれた場合は連絡をしてください。
・眼の痛みや不快感が継続する
・眼充血の悪化
・目やにが多くなる
・光に対する過敏症
・飛蚊症(眼の前を小さな浮遊物が飛んでいるように見える)がひどくなる
・視力の低下を感じる
光線力学療法(PDT)
「ビスダイン」という光に反応する薬剤を静脈に注射した後、弱いレーザーを照射することでビスダインを活性化し、新生血管を退縮させます。正常な網膜に傷をつけることなく視力の低下が抑えられる治療法です。治療後はしばらく日光に当たれなくなります。この治療は望月眼科では行っておりませんので、九州大学病院を紹介させて頂きます。
レーザー光凝固療法
新生血管が中心窩にない場合、レーザー光で新生血管を焼き固める治療法です。レーザー照射した場所の視力が欠けるなど、周囲の正常組織にダメージを与える問題があります。
硝子体手術
硝子体出血になった場合は、硝子体手術が選択されます。
硝子体手術では、まず硝子体を切除し、同時に硝子体出血を除去します。続いて光凝固・増殖膜除去・止血などを行い、必要に応じて空気やガス・シリコンオイルを眼内に注入して手術を終了します。空気・ガス・シリコンオイルを注入した場合には、術後うつ伏せ姿勢を保つ必要があります。
うつ伏せ期間は注入した物質や病状によって異なりますが、ガスのある2~3週間はできるだけ仰向けにならないでください。注入した空気やガスは吸収され眼内液に自然に置き換わっていきます。シリコンオイルは状態が落ち着けば除去します。
加齢黄斑変性を予防するには
加齢黄斑変性は、気づいたときにはかなり進行していることが少なくありません。予防のためには、前の章で紹介した3大リスク要因(加齢、喫煙、遺伝)に該当する場合は、目に異常を感じていなくても、一度は眼科を受診するようにしましょう。